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価格上昇が続く中国の住宅事情 一方では…

2010年3月10日 20:45
価格上昇が続く中国の住宅事情 一方では…

 今、「東洋のハワイ」といわれる中国・海南島に、観光以外の目的の人たちが押し寄せている。その目的は、リゾートマンションや一戸建て住宅の見学で、購入希望者が中国各地から集まっているという。

 海南島の不動産の人気が高まったきっかけは、去年末の中央政府の発表にあった。「海南島を世界的な観光リゾートにする」という方針が打ち出されたことで投資家たちから注目され、海南島の新築物件は前年比約30%も上昇した。海の目の前という絶好のロケーションに建つ一戸建ては、8億円もするが、発売開始直後にすべて売り切れたという。

 機械工場を営んでいた金日雄さんは、経営を息子に譲り、現在は島で10棟の不動産に投資している。インフレで銀行に預金しても利息は2%と低く、不動産を持つ方がいいという。3年前に買った物件が3倍の値段にはね上がったという金さん。もうけは新たな投資物件の購入に充てている。

 中国の不動産価格は全国平均で約9.5%上昇している。上海では、広さ80平方メートルのマンションが平均年収の100倍以上するほど値上がりした。上海の大手ゼネコンに勤める徐健さんは去年、築16年、広さ93平方メートルの中古マンションを約1600万円で購入した。マンションの価格はその4か月後には20%も上昇し、早めに買った安堵(あんど)感もさることながら、市場の異常さに驚いているという。徐さんは「今の価格は常識を超えています。私は不動産の仕事をしていますから、よくわかります」と話す。徐さんの月給は、上海市民の平均の約4倍にあたる13万円で、その40%をローンの返済に充てている。

 一方、再開発計画の進む海南島の住宅地では、不動産価格の急激な上昇がきっかけで住民たちの不満が高まっている。洗さん一家は、街の再開発計画のため、市政府から立ち退きを迫られている。不動産価格の高騰で自宅マンションの市場価格は2600万円に上昇したが、市からの補償金はそのわずか10分の1で、新しい補償の計画を望んでいる。立ち退き期限まであと3か月だが、洗さんの引っ越し先は決まっていない。

 温家宝首相は今月5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)で、「一部の都市でみられる住宅価格の急騰の勢いを食い止め、人民大衆の基本的な住宅需要を満たさなければならない」と述べ、不動産価格の高騰に歯止めをかけると明言した。しかし、「三井住友銀行(中国)有限公司」の薗田直孝部長が「中国が持ち家政策を打ち出してから十数年。まだまだ根強い実需に支えられた健全な部分がたくさんある」と述べるなど、専門家は価格上昇は今後も続くと指摘する。

 今年にも日本を抜いて世界第2位の経済大国となる見通しの中国。マイホームは高根の花という状態はしばらく続きそうだ。