×

中国人への観光ビザ緩和から1か月

2010年8月2日 1:48

 日本を訪れる中国人への個人観光ビザの発給条件が緩和されてから1か月がたった。発給件数は大幅に増えているが、中国では「ビザのハードルは依然として高い」という不満の声が上がっている。中国総局・勝田真司記者が取材した。

 観光庁は日本時間先月28日、中国人への個人観光ビザの発給が条件を緩和した日本時間先月1日から23日までで5836件となり、去年7月と比べて5.6倍に増えたと発表した。

 観光庁・溝畑長官は先月1日、中国・瀋陽を訪れ、個人観光ビザを申請した第1号の範春玲さんにプレゼントを渡すなどして、条件緩和をアピールした。

 先月29日、記者は範さんの職場を訪ねた。範さんは不動産投資やレストランを経営する会社の人事部長で、十分な年収も得ている。しかし、範さんは「(ビザ申請の)1号に選ばれましたが、ビザの申請は却下されました」と話した。ビザが下りない理由については、旅行会社を通じて「部長という地位であれば、国営企業でなければならないなど、複数の条件を満たしていない」との説明を受けたという。

 記者が取材をした複数の旅行会社からは、「依然としてハードルは高く、手続きも煩雑だ」という不満の声が聞かれた。また、各旅行会社は、「自由旅行のニーズは高く、条件がさらに緩和されれば訪日客はもっと増える」と口をそろえる。

 ビザ発給は外務省の管轄だが、緩和については不法滞在の問題なども含め、警察庁や法務省を交えた議論が必要だ。経済成長の流れに乗って中国人の観光熱は高まる一方で、観光庁は去年約100万人だった日本を訪れる中国人を、16年までに6倍の600万人に増やす目標を掲げている。

 中国の巨大な潜在需要をいかにして日本に取り込むかが、観光立国の実現に向けたカギとなる。