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中国のメンツをかけた!?意外な取り組み

2010年11月17日 17:03
中国のメンツをかけた!?意外な取り組み

 中国・広州では、スポーツの祭典、アジア競技大会が開かれている。街では開催国のメンツをかけ、意外な取り組みが行われていた。上海支局・藤田和昭記者が取材した。

 4年に1度開かれる、アジア競技大会。中国が、北京オリンピック、そして上海万博につづく国家行事と位置づけるビッグイベントだ。市民は「環境がよくなって、交通も便利になったよ。広州の人にとってすばらしい事です。広州人の誇りです」と語る。

 開催都市の広州では街のイメージアップのためか、ある奇策がとられていた。「祖国万歳」と書かれたビルはよく見ると、窓ガラスは本物ではなく、絵で描かれている。大通りに面した、工事中のビルは外国選手たちの目を気にしてか、見栄えをよくした張りぼてビルだった。「これは明らかな、“メンツ”のためのプロジェクトだよ。外見ばかりで中身がない。こんなのはたくさんありますよ」と語る人もいる。ビルの裏側に行ってみると、コンクリートがむき出しになっていて、工事が途中で止まっていることがわかる。張りぼてビルの裏側は、何も手が加えられていなかった。人目につかないところには何もしない、という割り切った考えのようだ。ビルの低層階には電器店などが営業している。中がどうなっているのかビルに入ってみた。エレベーターがあるのだが5階までしか上がることができない。「安全出口」という表示があり、上に行ける階段があるかもしれないと思い行ってみると、下に降りる階段しかなく、やはり5階から上へは上がれなかった。ビル内で働く人は「上には行けないよ。いつ来ても階段なんて見たことないよ」と話す。中で働く人もビルの上層階に行く方法を知らなかった。張りぼての実態を間近で見られないようにするためなのかもしれない。

 一方、アジア競技大会の開会式の会場近くにあるマンションの住民には、特別指令が出されていた。開会式の夜は部屋の電気をつけるように言われたという。マンションに明りをつけることで開会式のテレビ中継で夜景を美しく見せるためと言われている。約1200円の謝礼が支払われるということだ。

 開発ラッシュが続く広州では不動産価格が1週間で約7%も上がるほど高騰している。アジア競技大会の看板で外から見えないように目隠しされた一角では古い住宅から住民が消え、ゴーストタウンのようになっていた。開会式の会場近くにある地域の建物は競技がはじまる2か月ほど前に突然、立ち退きが始まった。50年間ずっと、この地域で暮らしてきたという女性は、不動産価格が高くなりすぎて、引っ越しできずにいる。いつ、強制退去させられるか、不安におびえながら、暮らしているという。彼女は「お金がないし、仕事もない。どうやってお金の高い部屋が買えますか?」と心情を吐露した。

 中国は、アジア大会の招致成功からこれまで街の整備などに1兆5000億円を投じたという。市民の不満を封じ込めてでもなりふりかまわぬ取り組みで国のメンツを保とうとしているのかもしれない。