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中国の知られざる海洋戦略 国産空母に迫る

2011年1月23日 16:42

 中国・胡錦濤国家主席は20日、アメリカ・ワシントンで講演し、「永遠に対外侵略をしない」と中国の覇権主義を否定した。しかし、その一方で、中国軍はひそかに巨大空母の建造を進めている。中国の知られざる海洋戦略に迫った。

 中国・遼寧省大連は、造船所が立ち並ぶ港町。岸壁の近くを走る電車に乗ると、建物の向こうに白っぽい巨大な中国軍の空母が見えてきた。先端部分はスキーのジャンプ台のように反り上がっている。中国の軍軍に詳しい平松茂雄氏は「これは、80年代後半に旧ソ連が造った空母。『ワリャーグ』という名前がついています」と話す。

 「ワリャーグ」は、旧ソ連が85年からウクライナの造船所で建造を進めていた。しかし、完成間近に旧ソ連が崩壊し、放置状態になっていた。これを中国系企業が「カジノとして再利用する」と購入し、01年、大連にえい航した。しかし、カジノにはされず、07年頃から改装工事が行われていたとみられる。平松氏は「色々な付帯施設や通信施設だとか、そういったものをつけていると思う」と分析している。

 一方、中国は国産空母の建造も進めている。去年1月、軍の幹部は中国メディアに対し、「国産空母2隻の建造を進めている」と明らかにした。

 NNNは09年11月、湖北省武漢にある、国産空母の開発拠点とみられる軍の関連施設を取材していた。この施設では実物大の空母の模型が造られ、空母建造に向けた研究が進められているとみられる。内陸部の街に出現した空母の模型は甲板の先端が反り上がり、旧ソ連の空母によく似ている。また、甲板上には黒い布をかぶせられた戦闘機らしいものも見えた。この施設は地図に載っておらず、厳重な警戒態勢が取られていた。

 中国は、研究で得たデータなどを基に、国産の空母を上海の造船所で建造しているとみられる。

 空母を持つ最大のメリットは、自国から遠く離れた場所で戦闘機などの航空機を運用できることにある。空母の建造を進め、他の艦艇についても近代化を進める中国の狙いは何か。

 「空母を持つということは、オーシャン(大海)に出ていくということ。これは、中国の海軍戦略の非常に大きな重要な転換になる」-平松氏によると、アメリカの軍事力に対抗しようとする中国は、九州からフィリピン諸島までの第1列島線、伊豆諸島からパプアニューギニアまでの第2列島線と、段階を経ながら軍事的な活動の範囲を広げようとしている。

 中国の軍事開発について、アメリカ軍・マレン統合参謀本部議長は12日の会見で「中国の軍事開発の多くは、アメリカを強く意識したもののようだ」と述べ、非常に強い警戒感を示している。

 一方、訪米した胡主席は20日、「中国はいかなる国の脅威にもならない。永遠に覇権を唱えない。永遠に対外侵略をしない」と述べ、自国の発展をもって世界の平和を維持するとしている。