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原発キーワード「学校の放射線」

2011年5月6日 2:21
原発キーワード「学校の放射線」

 原子力発電所に関する報道、水や食物などへの影響に関する報道の中で、わかりにくい言葉や気になる情報を毎回1つピックアップし、日本テレビ報道局の担当記者が解説する「原発キーワード」。5日は「学校の放射線」について、原発事故取材班・星川泰応記者が解説する。

 文科省は先月19日、校庭などを利用する際の放射線量の基準を発表した。これは、小中学校や幼稚園などの校庭を普段通り使える目安を一年間の放射線量で20ミリシーベルト以下として、これを超えそうな場合は一日の利用時間を1時間程度に制限するというもの。しかし、「この基準では、子供の安全は守れない」という意見も多い。先月30日、東京大学大学院・小佐古敏荘教授が原発対応の内閣官房参与を辞任した理由の一つにもなっている。

 20ミリシーベルトを基準とするにあたり、文科省が根拠にしたのは、ICRP(=国際放射線防護委員会)が07年に出した基準だ。ICRPは、通常、一般の人が一年間に浴びる放射線量が1ミリシーベルトを超えないよう求めている。しかし、原発事故などの緊急時はこれを20~100ミリシーベルトに、事故が非常事態を脱して収束に向かっている状態では1~20ミリシーベルトとする基準を出している。ここから20ミリシーベルトという数字を持ってきた。

 ICRPの基準は子供と大人の区別をしていないため、文科省の基準が高すぎるという意見もある。一般的に、子供は大人よりも放射線の影響を受けやすいといわれている。また、今回は校庭などに関する基準なので、子供たちが走り回って舞い上がった土を吸い込んで放射性物質が体内に入ってしまうおそれもあるなどとして、大人と子供では基準を変えるべきだと主張している。

 どこかで基準を決めないといけないが、そのためには、政府が責任を持って基準を作り、納得のいく説明をする必要がある。そういった意味では、現在の政府の対応には不十分な点も多いといえる。

 統合本部の会見などでも様々な質問が出ているが、現在の基準をすぐに変える可能性は低そうだ。ただし、現在の基準は夏休み終了までの暫定的なもので、文科省は毎週、放射線量を計測して、必要があれば秋までに基準を見直すことにしている。そこでこの基準が変わることがあるのか、政府がきちんと説明責任を果たすのかが、今後、注目される。

 「安全」な基準を示すだけではなく、それを保護者や子供たちの「安心」につなげていく取り組みが、政府や自治体には求められている。