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北朝鮮国境の町・豆満江の貴重な映像を公開

2011年10月19日 16:14
北朝鮮国境の町・豆満江の貴重な映像を公開

 北朝鮮からシベリア鉄道を経て、はるか先のヨーロッパへ…10月上旬、ついにこの区間が一本のレールでつながった。この歴史的なイベントを祝う式典が、ロシアとの国境に近い北朝鮮・豆満江の町で行われた。北朝鮮による厳しい規制の中、町の様子をモスクワ支局・片野弘一記者が取材した。

 ロシアから北朝鮮へ向かう特別列車が、国境の川を渡る。列車の進行方向から右手にある川を望むと、数百メートル先の地点でゆるやかに左方向に蛇行している。その右側に見える陸は中国だ。その中国を目指して、多くの脱北者たちがこの川を渡ったという。特別列車はロシアから、出来たばかりの線路を通って、開通式典の行われる北朝鮮・豆満江の駅に着いた。

 到着しても、入国審査が終わるまで列車から降りることは許されない。列車の窓からホームを眺めていると、向かい側に北朝鮮の列車が入ってきた。プレートには「モスクワ行き」との表記が…この列車、実は式典に参加する北朝鮮の代表団が乗ったものだ。モスクワ行きというのは、鉄道がヨーロッパと直結したことを示す表現なのだろう。

 ホームでは、民族衣装を着た北朝鮮の女性たちが、笑顔を振りまきながら歩いている。続いて、花束を持った制服姿の人々も現れた…歓迎団の一員だろうか。まさに北朝鮮ならではの光景と言えそうだ。祝賀会では、色とりどりのチマチョゴリに身を包んだ女性たちが集まっていた。地元・豆満江の人々だという。

 自由な取材が許されない北朝鮮だが、式典後の時間を利用して、国境の町・豆満江を歩いてみることになった。通りに集まっていた集団にあいさつをして、撮影の可否を尋ねてみるが、やはり、正面から町の様子や人々を撮影するのは難しいようだ。

 しばらく歩くと、広場のような場所に着いた。何に使う広場だろうか。そこには、金正日総書記ではなく、その父親にあたる故金日成主席の肖像画のようなものが飾ってあった。鉄道関係者の宿舎のような建物も見受けられる。近くにはショップのようなものもあるようだ。中に入って商品を見てみると、さまざまな洋酒や靴、子供のおもちゃ、そしてぬいぐるみまでが置いてあった。気になったものを手に取り、購入してみることにした。朝鮮ニンジン入りの焼酎は日本円で約300円、色をつけた小さな貝を並べて作ったツボは約1000円だった。ツボは北朝鮮の民芸品とのことだが、手の込んだ作りでとても美しい。

 撮影後、取材班は、“公安”を名乗る人々から尋問を受け、撮影映像を厳しくチェックされた。市民から通報があったとのことだ。日本とは全く違う厳しい取材制限。ヨーロッパに向けて“開かれた町”とはいえ、北朝鮮の現実の一端を垣間見たような気にさせられた。