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2年後の米大統領選 “主役”はヒラリー氏

2014年7月25日 16:29
2年後の米大統領選 “主役”はヒラリー氏

 アメリカでは、2年後の大統領選挙に向けた動きが早くも始まっている。主役はヒラリー・クリントン前国務長官。その周辺はもちろん、世論もすでに過熱気味だ。

 6月10日、朝7時前だというのに、ニューヨークの街角はざわめいていた。長蛇の列の先にあったのは、ヒラリー・クリントン前国務長官のサイン会だった。なかには「きのうの午後2時半に来たよ」という人もいた。

 「アメリカには世界をリードし、世界の問題を解決するための“困難な選択”が今後もたくさんあるでしょう」

 “困難な選択”と題した国務長官時代の回想録を出版したクリントン前長官。サイン会でアメリカの将来を語る理由は、この日が、2年後の大統領選挙に向けた事実上のスタートだからなのだ。

 6月11日、生まれ故郷のシカゴを訪れたクリントン前長官は、盛大な歓迎を受けた。ここでも、経済、教育、外交と、さまざまな問題に切り込んだ。

 「アメリカン・ドリームとは何かを我々は再構築しなくてはならない。私は、これは実現可能だと思うし、極めて必要なことだと思っています」

 そんなクリントン前長官にメディアも熱い視線をよせている。連日のように取り上げ、世論はすでにヒートアップしている。街角で「いま投票するなら?」という質問をしたところ、「誰が出馬するかによるけど、ヒラリーが出馬するなら彼女に投票するわ」「この何も動かない停滞した状態から抜け出す時期です。だから、ヒラリーが出馬したら彼女に投票するよ」との声を聞くことができた。クリントン前長官以外は影が薄いのが現状だ。

 世論調査でも、民主党支持層の約7割が支持。共和党で名前が取り沙汰されるブッシュ前大統領の弟らは、いずれも“もしも今日、大統領選挙があったら”クリントン前長官に敗れるという結果が出ている。女性初の大統領が誕生する可能性はあるのだろうか。

 大統領選挙に欠かせないのは潤沢な資金とスタッフ。ニューヨークでもシカゴでも、派手なバスがイベント会場の近くにとめられていた。前長官を支援する団体が、行く先々でサポーターを集めているのだ。首都ワシントンに近い彼らの事務所を訪ねると、スタッフは“ヒラリーグッズ”の発送に追われていた。携帯電話のケースや犬の首輪、さらには赤ちゃん用の産着まで、実にさまざまなものがあった。こうしたグッズの収益が活動資金となる。

 ワシントン郊外の大型量販店で行ったサイン会も大盛況。このときも店の外では、多くの人がサポーターの登録をしていた。登録を行った人は「選挙までまだ2年あるけど支持しつづけますよ」と話す。こうしたサポーターはすでに200万人。集めた献金は6億円にものぼるという。

 大統領選への一言一句が注目されるクリントン前長官。しかし、サイン会などではその話題を口にしなかった。待望論とは裏腹に、当面はあえて態度の表明をしないようだ。テレビ番組のインタビューで受けた「今年中の出馬表明はない?」との質問にはこう答えていた。

 「もちろん今年中にはないですよ。今年いっぱいはアメリカ各地を回って、秋には中間選挙の応援をする。それから大きく呼吸をして出馬するかどうか…自分にとってのプラス・マイナスを考えてみる」

 どうして、当面、世論や野党の出方を見極めるというのだろうか。シカゴトリビューン紙の政治担当上級主筆はこう見ている。

 「彼女は長く公務についていた人です。新著の中でイラクでの武力行使決議案を支持したことを謝罪しています。こういうところで彼女は攻撃されやすくなるでしょう。今年秋の中間選挙の結果が彼女の決定にも影響を与えるでしょう。中間選挙後の議会がどうなるかで、どう大統領選を戦うかも変わるでしょう」

 野党共和党は、回想録のタイトル“困難な選択”を“劣悪な選択”ともじった資料を早くも作成。「クリントン国務長官の時代に北朝鮮の核開発が進んだ」などと例を挙げ、彼女は成果を上げなかったのだと強調している。

 世論の高まりだけでは、大統領選挙への名乗りは簡単に上げることはできない。前長官は回想録を「次の“困難な選択”をする時はすぐにやってくるだろう」と締めくくっている。出馬表明のタイミングはいつ訪れるのだろうか。