金融追加緩和、なぜこのタイミング?
日本銀行は31日、金融政策の追加緩和を決定した。これを受けて日経平均株価は一時800円以上も急上昇した。株価が急上昇した理由や、日銀がこの時期に追加緩和を行った理由などを経済部・松井駿介記者が解説する。
日銀は31日に行った金融政策決定会合で、世の中に1年間に供給するお金の量を現在の60兆~70兆円から約80兆円に増やすことを決めた。
日銀・黒田総裁「日本銀行は本日、2%の物価安定の目標の早期実現を確かなものにするために、量的質的金融緩和を拡大することを決定しました。それなりの効果があると思っております」
日銀はデフレ脱却のため、物価を前年比2%上昇させる目標を掲げている。しかし、このままの状態が続くとデフレからの脱却が遅れるリスクがあると判断した。
これを受けて日経平均株価は一時800円以上も値上がりし、終値は7年ぶりの高値水準となった。また、外国為替市場の円相場は1ドル111円台と急激に円安に傾いた。
【日銀はどうして物価の引き上げにこだわるのか?】
一般的に、モノの値段が上がると企業は業績が良くなる。そうすると、そこで働いている人の給料も増える。給料が増えると、買い物にお金を使えるようになる。この物価の上昇による好循環が続くことで、日本経済を良くしようというのが日銀の狙いだ。
【株価が急上昇したのはなぜか?】
金融政策決定会合は黒田総裁を含む9人で話し合われるが、今回の追加緩和の決定は、実は賛成が5人、反対が4人というギリギリのところでの決定で、これは市場にとってもかなりのサプライズだった。追加緩和により企業の業績が良くなるとみた投資家たちが一気に株を買ったため、急激に株価が上昇したと考えられる。
【日銀はなぜ、この時期に追加緩和を行ったのか?】
今回の決定の背景には「物価を安定的に上昇させる」という日銀の目標が大きく関わっている。日銀は31日の発表で、「消費税増税後の反動減や原油価格の下落などが物価の上昇を妨げている」としている。これらの要因が続く場合、これまで続いてきたデフレからの脱却の動きが遅れるリスクがあるとして、追加緩和に踏み切った。
また、政府が消費税増税の判断を決断する時期も迫っているが、黒田総裁は「消費税率を10%に引き上げるべき」という旨の発言をこれまで何度もしてきた。
しかし、このところ経済指標の悪化が目立つことなどから、与党内でも「消費税増税を見送るべき」という声が上がった。このため、ある市場関係者からは、追加緩和決定の裏には「日銀は先にやるべきことをやったから、政府はちゃんと消費税率を10%に引き上げるべき」という意味合いもあるのではないかという意見も聞かれた。